山に憑かれて


山の本ってなんかいいですよね。


本の内容にもよりますが、読み進んでいくうちに、その情景や心情、足元に咲く可憐な高山植物達

頬をなでる風や匂い、イワヒバリの鳴き声、登山道に転がる岩を踏む音、真っ青な空に一際白く聳える高峰

その全てが感じられ、そしてあぁ・・山に行きたいと思ってしまうのです。



以前ご紹介した『高熱隧道』や『百年前の山を歩く』を読み終えた矢先、さて次は何の本を読もうか・・

ちょうどそんな風に考えていた時、ブロ友こうちさんからタイミングよく紹介された本がこちら


白旗史朗著 『山に憑かれて』 成美堂出版の一冊!もちろん早速ゲット(笑)

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昭和52年発刊ですので、もう古書の仲間入りでしょうかね。


白旗史朗氏と言えば、多少なりとも山岳写真に興味のある方なら知らない人はいないですよね。

この本は、新たに書き下ろしたものを加えたエッセイ集


個人的な意見ですが、白旗さんって写真に対する考え方や批評を見る限りでは

かなり辛口だと思いますし、そして頑固おやじという印象(笑)


しかし、この本を読む限り、山に対する姿勢は意外と柔らかい感じの文章でまとめていました。

なかでも、南アルプスに対する思い入れはさすがで、たくさん南アルプスの話が出てきます。


写真の師匠である岡田紅陽氏らとともに、重い機材をかかえ、穴山駅から平川峠を越えて

御座石鉱泉から鳳凰に登ったのは、昭和27年の陽射しが照りつける夏の日

そこで北岳などの眺めを見て、すっかり南アルプスに吸い取られてしまったと書かれています。


そう、鳳凰から北岳をみると、こんなに素晴らしいんです!(2012年9月鳳凰三山縦走時)

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朝陽を浴びて、赫々と青空に聳える北岳は、きっと息をのむ景色だったことではないでしょうか。


また、「山での異様な体験」はなかなか面白い話でしたので、ちょっとご紹介しましょう。


昭和33年11月、平標小屋での出来事

夜トイレに一人向かい用を足していると、ガサッ ガサッと雪を踏んで次第に人が近づいてくる。

自分と同じく、誰かが夜中のうちに用を足しに来たんだなと思い、入ってると声をかけた。

しかし足音は止まりも引き返しもせず、そのまま近づいてくる。

その足音は、足音だけを残してそのまま小屋の水場に降りて行った。

不審に思い、小屋に帰って誰か外に出たか聞いたが、誰も出ていないという。

その場に居合わせた一同は、東芝山岳会が平標山でパーティー全員疲労凍死した事件を思い出した。

その現場というのが、平標小屋が見える場所で起きていた。この時、この小屋に入っていた番人が

窓ガラスの向こうから覗いている人影に気づき、声をかけたのに入ってこないで、いつまでも怨めしそうに

温かい小屋の中を覗いていたという・・・・・・


いつかこのブログでも記事にしましたが、マツダランプの看板道標、覚えていますか?

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(これはぴろりん隊と荒船山に登った時の写真)

そう、この東芝山岳会が平標山で遭難死したため、この看板が各地の山に設置されたんですね。

何だか、色々つながっているではないか・・・と一人ぞっとしながら読みふけておりました。


最近は山に入る人も昔に比べると格段に多くなり、あまりこの手の話は聞かなくなりましたが

やはり山には、未だ持ってこのような事は・・あるんでしょうねぇ。



おっと、本の話に戻しましょうか(笑)

巻頭には、尾瀬、北岳、五竜岳、マッターホルンなどの写真が挿入されているんですが

どれも素晴らしい写真ばかり!特にオイラは、五竜の写真がお気に入りです。

こんな写真を撮ることができたらいいなぁ・・・と思いましたが、まぁ無理だな(笑)



で、この本、『続・山に憑かれて』 も昭和60年に出ていたようで、こちらも早速ゲット!

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山に対する真摯な姿勢がひしひし感じられ、そしてその情景を一枚の絵に切り取る白旗さん

その想いを感じることが出来て、山に行きたいっ と本気で思える1冊でした。

あっ・・続編は、これから読みますが(笑)


最後に、一番心に響いた「北岳-我が永遠の山」からの一節

かつて私が恋い、憧れ、全てを代償として悔いないとさえ思った山が 

”北岳” であった。


あぁーーー北岳また登りてぇ~!!



百年前の山を旅する


えっと、本日も本のお話・・・・ハイ、ネタ切れですので(笑)



高熱隧道に続き、次に読んだ本は 服部文祥著 『百年前の山を旅する』

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この服部さん、言わずと知れたサバイバル登山家。


長期山行に装備と食料を極力もち込まず、食料を現地調達するサバイバル登山をはじめ

そのスタイルで南アルプス・大井川~三峰川、八幡平・葛根田川~大深沢、白神山地、会津只見

下田川内、日高全山、北アルプス縦断、南アルプス縦断など日本のおもな山域を踏破。

それらの記録と半生をまとめた異色の山岳ノンフィクション『サバイバル登山家』を出版した。

フリークライミング、沢登り、山スキー、アルパインクライミングなど登山全般を実践する一方

近年は毛バリ釣り、魚突き、山菜・キノコなど獲物系の野遊びの割合が増え、05年からは狩猟もはじめる。

現在、山岳雑誌「岳人」誌上で自身の活動を報告する「スーパー登山論」を連載中。

※Wikipediaより抜粋


さすが東京都立大学フランス文学科卒業しただけあって、素晴らしい表現で書いています。


さて、そんな方が書いた 『百年前の山を旅する』

これは、当時のルートのみならず、当時のスタイル、寝具、食料にまでこだわってその行動を再現

尾根を歩き山の頂をつなぐ縦走、日本の沢登りを生み出した、田部重治がたどった道を歩いて行く

和服に鳥打帽、股引に脚絆、わらじ、着ござ、肩がけのかばん、時計すらもゼンマイ式に(笑)


米と味噌を持ち、夜は焚き火して野宿、その当時に思いを馳せて歩いて行く。


本の最初の物語は、田部重治と小暮理太郎が歩いた、浅川(現高尾駅)から三頭山までのルート

ここは現在関東ふれあい道として登山道も整備され、特に高尾から陣馬山まで多くの方が歩いてますよね。


何を考え、何を思って山に入ったのか、人はなぜ山にのぼるのか・・・そんな答えを探しながら・・・


他にも、ウェオルターウェストンの初登攀ルート、北アルプス奥穂高南陵

若狭から京都北山までの鯖街道、雑誌「岳人」が誕生するきっかけとなった白馬主稜線登攀

江戸時代黒部奥山廻りと言われた、小川温泉~鹿島槍ルートなどなど


登山のあるべき姿を思いながら、グイグイ引き込まれる文体は非常に面白い内容になっています。


その中で、とても印象に残った言葉


社会システムの安心感、交通機関の心地よさ、深く考えることなく避けているあたりまえのこと。

最先端の装備を使うのが悪いことではない。ただ先端装備の価値を十全に発揮するには

使う側にも同じくらいの高い能力や、これまで以上に厳しい環境が必要になるのではないか。

少なくともなんらかの助力を得るなら、それが意味することを意識しておくべきだ・・・・


この本を読むと、人はなぜ山にのぼるのか! 自分自身の答えが見えてくるかもしれないです。


高熱隧道


先週末、雲竜渓谷の予定していましたが、何だかトーンダウンしてしまい、ラーメン食べて終わってしまった休日

ちょうどその頃、雲竜渓谷で入山から1週間後に死亡となって発見されたという記事が・・・

なんでも沢へ滑落したようですが、あんなところで遭難?とちょっとびっくりしちゃいました。


危険は、どこにでも潜んでいるもんだなぁ・・と思ったゆうゆうでやんす。


みなさまこんばんわ!


さて、今夜は久しぶりに山の本でもご紹介しましょうか。


今読み終わった本がこちら

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吉村 昭著  『高熱隧道』

これは登山という本ではなく、黒部渓谷に発電所を作るべく、昭和11年着工した史上最悪とも言える

死者300人以上出した難区間のトンネル工事の記録です。


岩盤最高温度165℃、高温によりダイナマイト自然発火、音速の突風で吹き飛ばす泡雪崩・・・・

黒部渓谷には、とんでもない自然の猛威と深い歴史が秘められているんだと思い知らされます。


現在、黒部渓谷鉄道終点駅欅平にある黒部第三発電所と

その約6キロ上流仙人谷ダムから地下水路で水を引き、その落差を利用して水力発電をしているのですが

その第三発電所と仙人谷ダムをつなぐ工事、欅平~阿曽原温泉間が、この高熱隧道の舞台になっています。


そう、言わずと知れた下ノ廊下の一部なんですね。


下ノ廊下は、黒部ダムから欅平駅までの約30キロで、旧日電歩道が黒部ダムから阿曽原温泉まで

阿曽原温泉から欅平駅までを水平歩道と呼ばれています。


雪深く深い谷は残雪が解けにくく、水平歩道は初夏から秋にかけて、旧日電は1~2ヶ月のみ通行できる

今でも険しい渓谷なんですが、この本の中で『泡雪崩』という言葉を初めて知りました。

これは最大音速の3倍、秒速1000mのとんでもない早さで駆け抜けるそうで・・・・・


以下本文から抜粋

不安定の極みに達した雪庇が、その1000mにもおよぶ休傾斜を大崩落して泡雪崩と化し

5階建ての宿舎は、2階から上部を綺麗に引き裂いて、比高78mの山を超え、宿舎地点から580m先の大岩壁に

たたきつけられ、途中そのままの形で深夜の空中を運ばれた・・・・その死者数84名


泡雪崩は、世界的に見ても珍しい現象だそうで、今でも黒部渓谷の冬は時折発生するらしい。


水平歩道からの転落、誤爆で体は引き裂かれ岩に張り付く肉片、相次ぐ雪崩の轟音、灼熱のトンネル工事

想像を絶する環境の中でよくも開通したものだと驚くばかりです。


後年造られた黒部ダムの逸話が一般的に有名ですが、この実録のほうが断然面白いです。


綿密な調査によって書き上げた吉村昭のリアルの表現はやはり素晴らしい。

そうそう、吉村昭といえば『熊嵐』でも知れていますね。→ 以前熊嵐を読んだ時の記事


先人たちが苦労して歩いたこの道、先人たちも浸かった阿曽原温泉、ここはぜひ行きたいっ!


今年の紅葉は、ここにテントを持って行こうと、ゆうゆう隊の新たな計画に組み入れられたのでした。



ちょっと、色んな意味で怖いですけど(笑)




思いは馳せるばかり!北アルプス最深部


『日本アルプス』

なんと良い響きでしょう。

一般的には「ウォルター・ウェストン」が日本アルプスの父と言われ、名付け親のように思いがちですが

実は飛騨山脈を調査したイギリス人鉱山技師のウィリアム・ゴーランドが、ヨーロッパのアルプス山脈に因んで

そこから見える山脈や周辺を含めて「日本アルプス」と紹介したのが名前の由来だそうです。

後に小島烏水が飛騨山脈を「北アルプス」、木曽山脈を「中央アルプス」、赤石山脈を「南アルプス」とし

今に引き継がれ語られているのだとか。


ところで、アルプスの意味ってご存知ですか?


諸説あるようですが

アルプ(スイスの高山山腹の夏季放牧場;英語: alp,フランス語: alpe(女性),ドイツ語: Alpe(女性))

がいっぱいであるからアルプスであると考える説と

ケルト語の alp「岩山」を語源とし、ラテン語を経由したと考える説があるんだって。


どっちにしても、山を登っている方なら 「アルプス」と言う響きはいいものだなと思ったゆうゆうでやんす。


みなさまこんばんわ!



さて、今年の山行計画の中で、もちろんゆうゆう隊も北アルプスや南アルプスを目論んでいるのですが

先日、我が隊の副隊長ゆみっこともう一度色々計画を練りなおしてみると

どうしても行きたい場所が出てきたんですね。


それが、北アルプスのヘソとも言われる最深部


『 雲ノ平 


双六岳・・三俣蓮華岳・・黒部五郎・・鷲羽岳・・水晶岳・・薬師岳・・


鳥肌が立つほど、魅力あふれるワードが並んでいるではありませんか。

これは行くしか無いっしょ、いや絶対に行くべきでしょ!

今でしょ!

って盛り上がってしまい、当初予定していた表銀座から喜作新道を通って、槍ヶ岳を目指す山行を

いとも簡単に覆し、今月初めに夏の山行は雲ノ平を目指すことに相成りました、ハイ。


つーか、ゆうゆう隊、槍ヶ岳の直下まで行って、悪天候で登頂してないんですが・・・いつ穂先に登ろうか・・


となると、もう以前から欲しくてたまらなかったものがあったんですが

それが昨夜、長野県安曇野市穂高から届いたのでした!!

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この封筒に書かれている小屋の名前、いやぁ~しびれるぜ!


でね、とっても欲しかったのがこちら

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そう、雲ノ平周辺山々を登るなら、ぜひ読んでおきたい一冊

『 黒部の山賊 -アルプスの怪- 』 
伊藤正一著 実業之日本社


実はこれ、前々から欲しくてしょうがなかったんです。

ア●ゾンでは在庫なし、あっても1冊1200円の本が、とんでもない値段(確か7000円以上)

もちろん某オークションでも結構な値段で出てたり・・・・

そんなこともあり、ちょいと諦めかけていたんですが、なんと新版が出ていたんですよ!平成6年に!!

知らんかったぁ~

つーかこの本、初版は昭和39年・・・実に今から49年も前なんですが・・・・


しかしもだ、ゆみっこ発見したのです!1200円+送料で購入できることを!



三俣山荘や雲ノ平山荘で売っているらしく、しかもネット販売してくれるんですよ~

いやぁ~今の世の中、凄いですね~ 山小屋にしか売っていないものをネット販売してくれるんですね~


欲しい方は、こちらのサイトから購入出来ますぞ~ 三俣山荘事務所 山小屋グッズ


これは迷うことはないっすね~ で、早速購入したのですが


読み始めると、間違いなく止まらなくなります。

まず表紙をめくると・・・

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ちょっと見にくいですかね?




実は、雲ノ平山荘にこの本と同じ地図が掲示してあるそうで、これは見に行かなくてはなりません!

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で、ここに書かれていることが、この本に書かれているんですが、どれも実体験の話ですごく引きこまれます。


ちょっと一部抜粋

……黒部でイワナを釣って三俣小屋に泊まったところ、うわさの通りの山賊の親子がいた。

その夜は難なく床につく事ができたと思ったのもつかの間、山賊は彼の枕元ですごい山刀を研ぎ始めた。

気味悪くなって神経をそば立てている彼の耳に、山賊たちの話し声が、とぎれとぎれに聞こえてきた。

「殺っちまおうか」

「どうやって」

「首ったまを刺せばいいさ」

「いつやる」

「朝にしようか」

「にがすなよ」

恐ろしさのあまり、歯がガクガクとして合わなくなった……

(本書『黒部の山賊』より)


戦後の混乱の中、三俣山荘のオーナーとなった伊藤正一さんが、当時黒部で「山賊」と恐れられていた

猟師たちとの黒部山中での生活を色んなエピソードを交えて綴ったノンフェクション

山小屋を作るための苦労、山での食生活、訪れる登山者の交流、そうなんの救助、埋蔵金、かっぱ目撃

お化けの話、熊の話、白骨死体の話、殺人事件の話・・・・非日常的な話がてんこ盛りで凄い。


これを読んで、「あぁ~ここで白骨遺体が出た辺かぁ~ ここはかっぱが出たところかな?」

なんて思いながら、この夏雲ノ平に行ってきます!


この本読むと、ちょっとテント泊が怖いですけど(笑)


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いま、雲ノ平周辺に夢中なゆうゆう隊のお話しでした。


「山だ原始人だ幽霊だ」

なかなか心惹かれるタイトルじゃないですか?


これ、西丸震哉著 「山だ原始人だ幽霊だ」 というエッセイ本なんです。


以前、某山岳雑誌に紹介されており、なんとも面白そうなタイトルにグッとくるものがあり

早々ネット検索すると



ありましたよ~ ア○ゾンで! しかもですね~ なんと、驚きの1円なり!!

こりゃぁめっけもんだぁ~と購入。(ちなみに送料は250円だった・・・)


そして届いた本がこちら

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うっ カバーがない・・・・


しかも、古本と言うより古書と言った方がシックリくる色褪せ具合だ。

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しかしですねぇ

この本が発売されたのが1981年ですから、昭和56年!今から30年前の本なんです。


この年は、トヨタ自動車から「ソアラ」という車が誕生し、寺尾聡のルビーの指輪が11週連続トップ1位だったり

ロッテから雪見だいふくが発売され、Drスランプやうる星やつらが放映開始された、日本が元気だった時代。


当時の匂いと色褪せ具合が、これまたいい感じにノスタルジーを感じちゃいます(笑)だからこれでいいんです。

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内容は、エッセイ集なのでなかなか紹介が難しいですが

八ヶ岳でスキーをやったり、御岳山で人魂を見てそれを捕まえようとしたり、海外の原始人と暮らしてみたり

勤務先だった釜石で幽霊と話をしたりと、まぁなかなか面白い内容になっています。


このほかにも「山歩き山暮らし」中央公論社1974年 「山とお化けと自然界」中公文庫1990年 等々

おもろい書籍を出版しているようで、これまたネットで購入しようかと考えている次第でございます。

 
著者の西丸震哉先生は、関東大震災の年に誕生し、現在もご健在でして西丸震哉記念館を

長野県大町市に開いているようです。→西丸震哉記念館


秋の夜長、このような本を読んでみるのも、いいかもしれないですよ!




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